ツアー

The Northern Trust 総集編

FedExCupプレイオフ初戦は、パトリック・リードの優勝で幕を下ろしました。

125人でスタートした本大会、次の第2戦BMW Championshipに駒を進めることができたのは70人。

70位より下位にいた選手は、予選通過を目標に二日間戦い、予選通過時点で暫定60位以下の選手は、70位以内に入るために必死に戦っていました。日曜日のラウンドの際は、常時70位以内にいる場合は名前の横にグリーンマーク、それ以外はレッドマークが電光掲示板に表示され、選手もキャディもボードを意識しながらプレイしていました。

日曜日の帰り際に、選手/キャディ出入口にトレイラーが停まっていました。そのトレイラーには選手のキャディバッグが沢山積んでありました。トラックの横にいたスタッフに「これもしかしてシカゴ行き?」と聞いたら首を縦に振りました。バッグには頭文字TF(多分Tony Finau)とか、名前が書かれていて、このトラックに乗る乗らないで選手の今シーズンの運命が変わるんですね。こうやってプレイオフの際にはバッグが運ばれていくことを初めて知りました。

さて、話は遡って金曜日の雷による中断時のこと。アダム・スコット選手と話をしていた際、ユニクロ話になり僕の短パン見て「Uniqlo?」というほど本当にUNIQLO好き。彼の組でスコアリングするの分かっていたら、ポロシャツ持ってきたのになぁ~とぼやいたら「週末も来るなら、持ってきなよ。喜んでサインするよ!」ときました。金曜日の夜に土曜日の組み合わせが出た瞬間にアダムのスタート時間を見て逆算したら、10時半ごろに練習場に行くであろうと思い、土曜日の朝は10時に現地入りしました。真っ先に練習場に行ったら、キャディのジョンがいました。「Hi John!」と声をかけると「What’s up, Frank!」とちゃんと名前を呼んでくれました。

もうすぐ来るよというようなハンドシグナルくれたので待つこと5分ほど、アダムが練習場に現れました。多くのファンがサインを求めている中、アダムも僕の存在を認識し「シャツ持ってきた?」と言ったのでバッグの中からシャツを出したら、手招きで練習場内に呼び入れてくれて、その場でサインしてくれました。選手がMoving Dayの土曜日にこんなサービスするのを見たことない。本当に素晴らしい人間だと改めて好きになりました。「Thanks, Adam! Good luck today!」と握手を交わして練習場を後にしました。

スコアラーの詰め所に到着すると、上位陣の割り当てを決めている最中でした。

フランク、今日はパトリック・リードとジョン・ラムで頼むぞ!と言われ、思わずニッコリ!

リードはPresidents Cupでスコアリングしましたが、スペインのジョン・ラムは初めて。彼の小さいテークバックからの強い球筋は見てみたかったのでラッキーでした。

パトリック・リードは淡々とプレイして4アンダーのトータル14アンダーで首位。ジョン・ラムはLiberty Nationalのグリーンとの相性が悪いのかイライラ丸出しでした。やはりイライラ短気は悪循環を生みだし、悪いほうに行ってましたね。でも後半に入りジョン・ラムは平静を取り戻したかと思われ、3連続バーディーで2アンダーのトータル12アンダーで3位タイ、心の乱れが無かったらもっと良い結果が出てたと思います。

ラウンド終了後、スコアリングテーブルでPGAのオフィシャルが両選手に大会全体通してコース設定など何か意見あるかと問いかけました。二人とも同時に「Pace of Play! It was terrible!」スロープレイに関して意見を言ってました。今回デシャンボー選手がSNSなどで叩かれていることは皆さんもご存じと思いますが、本大会では選手たちの間でも大問題になっていました。実名を挙げて抗議していましたし、驚きました。スコアラーとしてラウンド後のスコアリングテーブルでオフィシャルと選手の会話を15年以上聞いていますが、実名挙げての抗議は初めて耳にしました。PGAツアーがどのような対応をするのか見ものです。ふと、全英女子で澁野選手がカメラが追い付かないほどのスピードプレイしていた姿を思い出し、プロアマ関係なく、みんながスピードプレイを心掛けるべきと思いました。僕自身も決して早くないので、反省してスピードプレイを心掛けます。

最終日、なんと再びアダム・スコットの組にアサインされました。同じ大会で二回同じ選手に付くのは殆どないので、凄い巡りあわせだと嬉しくなりました。プラスもう一名は松山選手。願ってもない最高の組み合わせ!1番TEEで待機していると、アダムが現れ「Frank, you are with me!」と笑顔で握手。その後ろから歩いてきたアダム・スコットの警備に付いてる警察官もまた一緒だねとハイタッチ、続くジョンも笑顔で挨拶。続いて松山選手のキャデイが登場「Hi, I’m Shota」と自己紹介してきたので「Hi, I’m Frank宜しくお願いします」とあいさつ。多分日本人とは思われなかったでしょう。そして松山選手登場、横にいたスタンダード(スコアーボード)ベアラーに挨拶して、僕にも挨拶してTEEに向かいました。4年前に一度Barclaysでスコアラーで付いた際は、スタート前の挨拶なし、プレイ後も不機嫌な表情でサインボールも手渡しではなく座っている体勢から背中越しに投げつけてきた非常に不愉快な経験があったので、この変わりように驚いた半面、とても嬉しくなりました。

大勢のファンが見守る中、プレイが開始!僕の知り合いも沢山観戦に来ていて、選手への声援はもちろんですが、フランクコールまで聞こえ一緒に歩いていた警官や報道陣に「お前は何者?」と言われてしまいました。

松山選手は良いショットを打つものの、なかなかピンに絡まず、パットも入らず苦戦。アダムは序盤からバーディーを積み重ね7番でボギーを叩きましたがOUTを33で回り、順位を上げていきました。

前半のハイライトは何といっても6番パー5の二打目をグリーン奥のラフに打ち込んだ松山選手、三打目をラフから見事にチップイン・イーグル!これにはギャラリーも大歓声!そして7番ホールに行く途中に、松山選手がそのボールを7歳くらいの少女にプレゼントしていました。この姿は本当に自然体で、僕が持っていた松山選手の印象を完全に覆しました。4年間背負っていた呪縛から解放されたのと、人間として大きく成長した松山選手の姿を眼にして涙が出そうになりました。

アダムは後半に入っても好調で更にバーディーを3個取り通算13アンダーで5位タイで終了。松山選手は、ショット・パット共にかみ合わず最終日は1オーバーで通算6アンダーの30位タイで終了。

松山選手はスコアカード提出後、僕のところに来て目を見ながら「Thank you very much!」と言ってサインボールを渡してくれました。結婚して父親になり、アメリカツアーにもしっかりと根付いてきた松山選手に、大きな期待と更なる飛躍が来ることを確信した瞬間でした。

アダムとの2ラウンド、優勝したリードに付いたこと、そして松山選手の新しい姿を見たこと、僕にとって最高のトーナメントでした。昨年のデシャンボーに続き、今回も土曜日に付いたリードが優勝!もしかしたら僕がスコアラーで土曜日に付く選手が優勝するという伝説が生まれるかな!?

今週はBMW Championship、松山選手の快進撃を期待したいです。現在FedExCupランキング33位なので、ツアーチャンピョンシップの切符を得るためには30位以内が必須。更に今年からはポイントがリセットされツアーチャンピョンシップで順位に合わせて初日に10アンダーからイーブンパーまでのスコアが与えられるので、なるべく上位でツアーチャンピョンシップを迎える必要があります。

松山ガンバレ!

 

ABOUT ME
フランク 早川
1963年1月生まれ。アメリ生活45年、ニューヨークにてITのコンサルティング会社を営んでいる。ゴルフ歴40年、とにかくゴルフをこよなく愛している。40代の頃はニューヨークで5本の指に入る腕前で今でも多くのアマチュア大会に参戦している。現在のハンデは7と低迷しているが、ニューヨークのアマチュアゴルフ界では知らないものはいない存在。 2003年からPGA・LPGAツアー並びにUSGA Championshipにてスコアラーのボランティアをはじめ、FedexCup Playoff、PGA Championship、US Openの上位グループのスコアラーも任されるようにまでなった。 またTokyo 2020では、ゴルフの競技委員として招待されるまでのレベルになる。米国内のクラブフィッター、ティーチングプロ、PGAプロ、フィジカルスセラピストとの交友も深く、常にゴルフ関係の動向にアンテナを張って生活している。