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プレジデンツ・カップ(後半戦)レポート

 

前半の二日間で10マッチを行い、アメリカが7勝1敗2引き分けと圧倒的な強さを見せ付けました。アメリカ代表は、プレジデンツ・カップ史上初となる土曜日に勝利を収める勢いでコースに到着しました。世界選抜は不名誉な歴史を作ることを阻止するために全力を尽くす勢いで練習場に姿を現しました。
通常のトーナメントで見せる姿とは異なる選手たち、いつもよりも近寄りがたい存在。

土曜日の午前は交互に球を打つFoursomeの4マッチ、アメリカ代表が4勝1分けで12対2.5。
午後のFour-Ballでアメリカが3勝1分すれば、最終日を待たずにアメリカがPresidents Cupを勝ち取ることになります。

僕は、土曜日午後の組に付くことだけは知らされていました。当日午前11時過ぎに組み合わせが発表された時に、大会担当者から「フランク、世界選抜やばいよね!日本人コネクションでポイント取ってきて面白くしようぜー」と言われ、松山/ベガス 対バーガー/トーマスの名前が入ったデバイスを手渡されました。嬉しい反面なんだかプレッシャーを感じてしまいました。自分は単なるスコアラーとして帯同するだけなのに何でなんだろう?こんな気持ちでスコアラーとして一番ホールに向かうのは過去に一度もありませんでした。

1番TEE横でスタンバイしていたら、進藤キャディが最初に登場!
軽く会釈して、「今日よろしくお願いします」と丁寧に挨拶してくれました!
木曜日に「小岸さんがよろしく言ってましたよ!」と声をかけたこともあり、選手が来るまでは少し話しながらセルフィーまで撮らせてもらいました。
大事なマッチの前に失礼いたしました。

今回のプレジデンツ・カップで唯一試合前に挨拶をしてくれたのは進藤さん一人のみでした!
その後、アメリカのキャディが素通り、世界選抜のベガスとキャディが素通り、松山選手もアイコンタクトもせずに素通り、そしてアメリカ選抜2名はキャディを従えて入場!観客はUSAコールで盛り立て、世界選抜の応援団も歌を歌って応援。実は応援合戦は、世界選抜の応援団の方がオリジナリティー満載、用意周到で軍配は大差で世界選抜応援団でした!
さあ、いよいよマッチ開始!

一番のTee Shot、何故か左に曲げる選手が多い!トーマスは池ポチャ、バーガーもハザードラインぎりぎりに打ち込みました。松山選手はドライバーでフェアウェイど真ん中にスーパーショットで残りは55ヤード位だったと思う。ベガスは松山の後なのにスプーンを持ってフェアウェイど真ん中。この選択には少し驚きました。チーム戦でベストボールであるので松山のボールの位置を考えればドライバーで攻めても良いのではと僕は思ってしまいました。
2打目を打つ場面になり、まずはベガスが打ってピン奥5メートルにオン。続いて松山選手。じっくりと考え、ゆっくりとルーチンをこなしてセカンドショット、見事にピン横1メートル半につけました。この時点で勝った!と思いました。続いてバーガー。ハザードラインを超えていたが球は打てそう。色々と考えた末に靴を脱ぎソックス脱いでクリーク内に立って打つ…と思ったら、ソックス履きシューズを履き直し爪先立ちしながらセカンドショット。このショットが奇跡的なスーパーショットでピン横ワンカップ、OKバーディーとなり世界選抜はパットを入れなければ負け。そこでベガスが難しい5メートルのパットを見事に沈めてドロー。
九分九厘世界選抜の1アップと思っていたホールだけにドローは痛かった。
しかし、そこから世界選抜が暴れました。松山がチームを引っ張り自らの力で3連続ホール勝ち取り、4番ホール終了時点で3アップ!これで勝負は付くだろうと誰もが思いました。
その後アメリカ選抜のショットが少しづつ良くなり、世界選抜の二人の相性も崩れ始め、前半終了の9番ホールから3連続ホール落として、一時は3アップだったのに11番で1ダウンとなりました。こうなるとアメリカチームの勢いは止められません。トーマスとバーガーの若手二人は共に会話をしながら作戦をたて、一球一球二人で組み立てながらプレーしていました。

その反面、ベガスと松山は殆ど会話をせずに淡々と自分のゲームをしていました。チーム戦でマッチをしている場合は、やはり互いに会話して作戦を練りながら戦う必要があると思うし、そうでなければならないと思う。言葉の壁がここに出てしまったのでしょう。
そして14番ホールでトーマスがミラクル的な14メートルのバーディーパットを沈めて2アップになった時の観客の歓声はものすごかったし、トーマス本人のエキサイトする姿は忘れられなかった。そこからは勢いに乗るアメリカチーム、何とか追いかけようと焦りをも感じさせる松山/ベガス。17番で決着がつき残念ながら3&2で敗退。

負けが決まったその時に18番で世界選抜のラヒリ/キム組が1アップで勝利を収め、14.5対3.5で土曜日が終了。アメリカはあと1ポイントで勝利することになった。日曜日の12マッチで1ポイント取れば勝利。これは消化試合と言われてもしょうがない状況になってしまいました。
スコアリングのヘッドコーターに戻った時に「フランクパワーも及ばなかったか!?」と言われ、「でも、今日決まらなくて良かったよ!」と主催者側も胸をなでおろしていました。プレジデンツ・カップ存続のためにも土曜日で決められたくなかったようです。

最終日の日曜日は、前日までの寒さと強風とうって変った最高の秋晴れの日となりました。
世界選抜がどこまで意地を見せるのか、12マッチの戦いを楽しみに現地入りしました。

朝現地入りする前から何だか雰囲気が違いました。警察関係車両が前日までの10倍以上、検問、道路閉鎖等などで駐車場に辿り着くのも一苦労。
何故?と思うでしょうが、それはトランプ大統領が観戦に来るからです。
ハリケーン・マリアの影響でアメリカ領土のプエルトリコで大災難にあっているアメリカ国民が何十万人といるなか、ゴルフの観戦かと非難の声もあがっている中、トランプは大好きなゴルフの観戦とカップの授与を行うことを選んだのでしょう。
駐車場で停めたあとシャトルバスに搭乗する前のSecurityチェックは飛行場よりも厳しいチェック、警察でなくアメリカ合衆国シークレットサービス(大統領の警護を行う執行機関)によるボディチェックまでされました。
またシャトルバスが会場内に入る直前にゲートで犬がバスに乗り込みクンクンとチェック、その後バスの周りもクンクン、多分爆発物など検知する犬だろうなと思いました。
やっとの思いで入場できました。
僕はダスティン・ジョンソン対ブレンダン・グレース。グレース選手は木曜日に僕が付いて世界選抜が勝利した時の選手。キャディのザックは僕のことを覚えていて挨拶してくれました。
進藤さんとザックさん、心温まる対応に感謝です!
ジョンソンはイケイケの超飛ばし屋、グレースは堅いゴルフをするプレイヤー。この相反する選手のマッチは非常に楽しみ!

この日はシングルズ・マッチ、各選手が自らの意地を見せる日です。
一番ホール、両選手ともにフェアウェーキープ。飛ばし屋ジョンソンはグレースを40ヤードオーバードライブ。二打目は共に4メートル弱。グレースはバーディー外し、ジョンソンがパットを決めて1アップのガッツポーズ!グレースは表情一つ変えずに二番ホールへ。
2番パー5はお互いに300+ドライブ、ジョンソン2オン、グレースはグリーン左に外し難しいアプローチを残しました。これでジョンソンの2アップになるかなと思ったがが、グレースが絶妙なアプローチで1.5メートルにつけ、ジョンソンもイーグルパット外しドロー。そんな感じでお互いに譲らずジョンソンの1アップ2アップが続きましたが、8番・9番でジョンソンがミスを連発し9番終わってALL Squareとなりました。

ジョンソンのいら立ちを察した奥さんのポーリーナさんはラブコールを送りながら応援、9番から10番への移動中の木陰で濃厚なキッス!オー、やるじゃん!と思いました。

ポーリーナさんはアメリカプロホッケーリーグ(NHL)で活躍しアイスホッケーの神様とまで言われたウェイン・グレツキー選手のお嬢様でモデル、シンガー、女優としても活躍していた超美人。僕も試合の途中でしたがセルフィーしてしまいました。信じてもらえないかもしれないけど、ポーリーナから「セルフィー撮ろうよ!」って誘われたのですよ!

10番ホールに到達した際に、上空をオスプレイ2機を先頭に大きなヘリが通過、それはトランプを乗せたマリーンワンという、大統領専用へりでした。その後、クラブハウスに入り14番ホールをプレイする選手に手を振って応援していました。クラブハウスの上にはスナイパーが6人。大統領の警備は半端じゃないです。

さて、キスのあとジョンソンは復活かと思われましたが、そこからなかなかお互いに勝機を見いだせず、17番でジョンソンが左に大きくTee ShotをミスしてAll Squareになり、流れはグレースに向いたかなと思いました。

アメリカチームの他の選手や世界選抜の他の選手も集まってきた中での18番パー3のTee Shot、グレースの打球はグリーンを大きく外し、グリーン左下の池横のラフ。アップアンドダウンは厳しい状態。ジョンソンはグリーンを若干外したがピンまで6メートルの比較的簡単なショットを残しました。完全にジョンソンの勝利が濃厚に見えました。
ところが、グレースがラフから見事なセコンドショット、1メートル弱!ジョンソンはセカンドを30センチにつけ、両選手がOK出し合って、このマッチはALL SQUAREで終了。とても良い試合でした!

18番グリーン周辺では、既に試合が終わった選手たちが大勢集まってお互いの健闘を祝し合っていました。素晴らしい光景でした!

圧倒的な強さで最終日を迎えたアメリカチームですが、日曜日のシングルスは3勝6敗3分とし最終的に19対11で幕を下ろしました。スコア的に見ると8ポイント差ですが、その差はポイントをはるかに超えたものでした。その裏には何があるのか?
答えは明白!アメリカ選抜は、自国の国旗を背負って試合に出ているのに対し、世界選抜は寄せ集めで、何も背負っていない。また、世界選抜には言葉の壁もあり、チームのハーモニーを感じられなかったと僕は思いました。チーム戦を見ると、南アフリカの2名が組んだ際は1勝1敗1分とアメリカ選抜に対し互角の戦いをしました。今後の世界チーム選抜を決めるうえで単に世界ランキングだけでなく、言葉や出身国なども意識してほしいと思います。

最後の表彰式には警護の壁が厚すぎて参加できませんでした。トランプが会場を出る前に帰ろうと試みたが、会場はトランプ大統領がヘリに乗り込むまで一切の出入りを禁止していて結局駐車場に向かうバスの中で一時間待たされました。

僕は、地元でのプレジデンツ・カップをインサイド・ザ・ロープで体験できたこと、本当にうれしく思いました。アメリカ選手の自国の代表になった誇りと国旗を背負った際に生まれる特別なパワーが僕自身にも刺さるように伝わってきました。2年後のメルボルンで開催されるプレジデンツ・カップ、世界選抜がリベンジを達成することを切に願っています。

2024年にはライダー・カップが僕のホームコースであるベスページ・ブラックで開催されます。
未だ7年先ですが、また招待されるようにこれからもPGA、LPGA、Senior PGA、USGAのトーナメントで実績を上げたいと思います。

 

 

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ABOUT ME
フランク 早川
1963年1月生まれ。アメリ生活45年、ニューヨークにてITのコンサルティング会社を営んでいる。ゴルフ歴40年、とにかくゴルフをこよなく愛している。40代の頃はニューヨークで5本の指に入る腕前で今でも多くのアマチュア大会に参戦している。現在のハンデは7と低迷しているが、ニューヨークのアマチュアゴルフ界では知らないものはいない存在。 2003年からPGA・LPGAツアー並びにUSGA Championshipにてスコアラーのボランティアをはじめ、FedexCup Playoff、PGA Championship、US Openの上位グループのスコアラーも任されるようにまでなった。 またTokyo 2020では、ゴルフの競技委員として招待されるまでのレベルになる。米国内のクラブフィッター、ティーチングプロ、PGAプロ、フィジカルスセラピストとの交友も深く、常にゴルフ関係の動向にアンテナを張って生活している。